2008年10月7日火曜日

大衆薬ネット通販「禁止の根拠を」

改正薬事法が全面施行されるのに合わせて、第三類以外の一般用医薬品(大衆薬)のインターネット通販を来春以降、禁止する方針を厚生労働省が示しているの を受けて、政府の規制改革会議(議長=草刈隆郎・日本郵船会長)は10月7日、同省との公開討論を開いた。大衆薬のネット通販が禁止されることで「消費者 の利便性が損なわれる」などと主張する同会議に対し、厚労省はネット通販では「コミュニケーションを取ることができない」などと反論し、議論は最後まで平 行線をたどった。

 公開討論では、▽医薬品のネット通販を禁止する法的根拠▽消費者の利便性▽医薬品の「対面販売」の原則がネット通販の規制の根拠になり得るか―などが論点になった。

 法的根拠をめぐっては、改正前の薬事法がネット通販の禁止を規定しているのかを会議側がただしたのに対し、厚労省側は「ぎりぎり適法だ」と応じた。
 会議側は、禁止の法的根拠として同省が挙げる条文が今回の改正で変更されていない点を指摘し、「条文で禁止されていないのに、なぜ禁止されるのか」と質 問した。厚労省側は「(今回の改正は)ネット通販だけでなく、全ての販売形態で対面による情報提供を求めている」と答えた上で、ネット通販で「対面の原 則」を確保するのは難しいとの見方を示した。

 また、「ネット通販やカタログ通販など対面でない形で売られた結果、副作用や事故が生じたのか」との質問に厚労省は、「副作用があった人が、薬をどこか ら買ったかまでは調べていない」と述べた。会議側は「一件も事故を把握していないのに全面禁止するのは、はなはだまずいのではないか」と批判した。

 大衆薬の販売は、薬剤師などの専門家が購入者と直接やりとりする「対面販売」が原則とされているが、胃腸薬や殺菌消毒薬など、消費者が自主判断で使用しても比較的問題が少ないものについてはネット通販が認められてきた。

 こうした中、今回の薬事法改正で大衆薬は、リスクの大きさに応じて▽第一類医薬品(H2ブロッカー含有薬など) ▽第二類医薬品(主な風邪薬など) ▽第三類医薬品(主な整腸薬など)―に分類され、これに合わせて厚労省は、ネット通販できる範囲を省令で規定することにした。
 リスクが最も大きい第一類医薬品では、適正使用のための情報を販売時に書面で購入者に提供するよう改正薬事法で求められており、厚労省はネット通販を認めない考え。一方、販売時の情報提供に関する規定がない第三類医薬品では認める見通しだ。
 また、書面による情報提供の努力義務の規定がある第二類医薬品については、対面の原則が担保できない限り認めない方針で、事実上の禁止になる。

 同会議によると、現在、ネット通販で扱われている大衆薬の7割近くが第二類医薬品といい、松井道夫委員(松井証券社長)は「なかなか薬屋に行けないへき 地の人たちはネット通販で大変助かっている。(禁止措置で)この道を閉ざすことになる」と批判した。また、ネット通販の主体には薬剤師の居る薬局が多いた め、安全性の観点からも問題はないとの見方を示した。
 これに対して厚労省側は、「普段、ネットを利用している方の多くが禁止されても影響がないとする調査結果もある。利便性がどこにあるのかという議論も出てくる」と反論した。

 厚労省は現在、省令改正案に対する意見募集を実施しており、これが終わり次第、「できるだけ早く」省令改正したい考え。これに対して規制改革会議は、年 末に取りまとめる第三次答申にこの問題を盛り込む方針だ。松井委員は公開討論後の記者会見で、大臣折衝も視野に議論を続ける考えを示した。

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